Silent FEN
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目覚まし時計が鳴らなくて、あわてた事ありませんか。  2002年9月も末のある朝、目覚ましラジオが鳴りませんでした。  話はここから始まり、日本の英語教育に対する問題提起となる、とほほな結末に向かいます。
宝石の表紙
かれこれ10年以上、毎朝7時になると、この目覚ましラジオがFENを流して、起こしてくれます。  最近はFENと言わず、AFNと言う様ですが、要するにAMの810kHzで 放送している米軍放送です。
それがこの日は鳴らなかったのです。  この目覚ましラジオはアナログダイアルになっているので、同調がずれる可能性はあります。  しかし、同調をとりなおしてみても、FENはどこへ行ったのか、まるで聞こえないのです。
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電車の中でよく聞いた、FEN専用のカード・ラジオを引っ張り出して来ても、きこえない!  これなら周波数がずれるはずが無いのだが、それでも聞こえません。
いったいどうしたのだろう、米軍が撤退したのかな? それとも、70年安保闘争がやっと結実したのかしらん。
10月の初めになるとインターネットの検索により、謎が解けました。
◎東京のAFNが停波!
戦後間断なく放送を継続してきた810kHzのAFN(横田基地)は機材の大規模な 交換・メンテナンスのため9月26日より放送を停止している。放送の再開は10月18日 の予定。今後のAFN放送継続のために必須の工事とのこと。再開時にはクリアな電波 になる予定。これにより東京ではロシアのRazdolnoye送信所からの沿海州放送 (Radio 810、URLはhttp://www.ptr-vlad.ru、21:10-22:00はローカルのリクエスト番組) が22時まで非常に強力に入感、その後は韓国の大邸文化放送(コールサインHLCT、 URLはhttp://www.tgmbc.co.kr)が聞こえる。
大好きなFENが聞こえないのは寂しいが、そう言われてみると、810kHzでロシア語風 や韓国語風の番組が聞こえます。 いやまてよ、関東地方で、これらの放送局を受信できる、 最後のチャンスかもしれない! 「今、ここでしか」という限定ものに異常な執着を示す暇人 が、なにやら獲物の臭いを嗅ぎつけました。
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ラジオ局を受信して、受信報告書を送ると、多くのラジオ局は受信確認書を送ってくれます。  左にある写真が日本放送から送られてきた受信確認書です。 確認を英語ではベリファイと言い、 このカードはベリ・カードと呼ばれています。 あなたが受信した放送は、確かに私たちが 放送したものです、という証明書です。
ロシアの沿海州放送と韓国の大邸文化放送のベリ・カードを収集するプロジェクトが始まりました。  さし当たって必要な情報は、受信報告を送るための 放送局の住所と、何時、どのような内容の放送をしていたかの記録です。  幸いなことに各放送局のサイトのURLが掲載されていたので、早速アクセスします。
ロシアの沿海州放送のサイト、ロシア語フォントが無いので、まったく読めません。  あっても同じことでロシア語は読めないのですが。 しかたが無いので、810kHzの放送局で 検索し、ウラジオストック周辺の放送局を紹介している日本人のホームページを 発見。 住所をご存じないかメールを送りましたら、翌日、早速お返事をいただきました。
お尋ねの件ですが、アドレスは RUSSIA 690670, Vladivostok, ulutsa Uborevicha, 20-A, Tikhookeanskaya Gosudarstvennaya Tele-Radio Kompaniya [Vladivostok] Primorskoe Radio です。返信があるかどうかは、運に大きく左右されるようです。ご成功をお祈りします。
OGUMAさん、ありがとうございました。
次は、韓国の大邸文化放送のホームページです。 うーん、これも読めない、 ハングル文字オンリー。 かろうじてmailの文字を判読できたので、受信報告を 送るから住所を教えてほしい、とのメールを出しました。 1週間たってまだ 返事はありません、関係ないアドレスだったかもしれません。
とりあえず、ロシアの沿海州放送に受信報告を送るため、放送内容を記録します。 夜の9時から10分間、男女のアナウンサーによるニュース。 そのあと、男性の おしゃべりと音楽が放送されていました。 ちょっと驚いたのは、これらの音楽が すべて米国の音楽だったことです。 受信報告には15分以上の聴取を規定している 放送局もあると言うことですから、30分間の記録をとりました。予想以上に受信状態は 安定しています。
この記録をもとに、受信報告を書きます。 受信報告の書き方は、「受信放送局名」 で検索して出てくる、WHAT'S BCLというページを参考にさせていただきました。
Dear Sir,
I had the great pleasure of having received one of your transmission as shown below;
STATION NAME: Primorskoe Radio FREQUENCY: 810kHz
DATE: October 2, 2002    TIME: 12:00〜12:30 UTC
RECEPTION QUALITY: SINPO=54554
INTERFERING STATION: none
MY RECEIVER: SONY ICF-C242 MY ANTENNA: Long wire
RECEPTION LOCATING: Tokyo Japan  LANGUAGE: Russian
PROGRAMME DATAILES:
12:00-12:10 News
12:13-12:16 English song by a male singer
12:21-12:24 Latin American song
12:26-12:30 English song
COMMENT:
Your Radio Program is very interesting
If you find this report correct to your station log,I would like to have a card of verification.
Yours faithfully,
(サイン)
ADDRESS: 2-6-xx Shirogane, Minatoku, Tokyo 108-0072 JAPAN. NAME: Hajime Y.
受信報告は大体常識で書けます。 なじみが無いのは受信品質で、SINPOコードであらわします。  SINPOは各々信号強度、混信、雑音、伝播障害、総合品質をあらわし、1から5の数字で あらわし、SINPO=55555が最高の受信状態を表します。
また、時間については世界標準時UTCを使います。UTCはグリニッジ標準時と同じで、日本標準時JST にくらべ9時間遅れています。
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報告書が出来たら、航空便で送ります。 ウラジオストックはアジアですから25グラムまで90円です。  90円分の記念切手を貼って封筒の下のところにRECEPTION REPORTと表記しました。
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返信用の封筒も同封します。SASEと呼ばれており、Self Addressed and Stamped Envelopの略ですから、 自分の住所を書いて返信用の切手を貼っておく必要があります。 ベリ・カードの大きさが 分からないので、幅の大きめの封筒を用意します。 今回は幅9.8cmの封筒を使っています。
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さて、返信用の切手を貼る必要があっても、ロシアの切手は手に入りません。 そこで国際返信切手券 を利用します。 受取人に返送料を負担させないで返信してもらえるように設けられている 制度が国際返信切手券です。 差出人が国際返信切手券を郵便局で購入して、郵便物に入れて受取人に送ると、 受取人は自分の国の郵便局で航空書状の最低料金に相当する郵便切手と交換できます。 大きさは葉書ぐらいで、 日本では150円で買うことが出来ます。 この国際返信切手券はIRCとも呼ばれています。
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余談になりますが、国際返信切手券、IRCの仕組みが2002年から大きく変わりました。偽造対策のため、 大きさが約倍になり、印刷や透かしが精巧になっています。 左の写真が古いIRCです。
昔のIRCは有効期限が無期限だったため、世界共通に使える貨幣のような形で流通していて、 便利なものでした。  IRCを受け取った人は郵便局で切手に交換するのではなく、IRCを必要としている人に転売するわけです。  郵便局でIRCが一枚140円だった20年くらい前には、100円くらいで流通していました。 ところが、万国郵便条約の一部改正に伴い、従来は無期限で使用できた国際返信切手券 に有効期限が設けられました。 IRCの貨幣としての機能は終わったのかもしれません。

また当時、IRCは船便の料金に相当する郵便切手と交換されていたので、航空便で送り返してもらう場合、 2から3枚同封する必要がありました。 新しいシステムでは船便ではなく航空書状の最低料金に相当 する郵便切手と交換出来るので、その面では現実的になりました。
それでは、昔のIRCは現在どう扱われるのでしょう。 1980年にホノルルで発行された42セントのIRC を実際に交換してみました。 本来、船便用の90円切手に交換することが出来るはずですが、 130円の切手に換えることが出来ました。 これは航空便で世界中に送ることの出来る金額です。 ちょっと得をした気持ちです。
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ロシアに国際返信切手券を送ることになるとは夢にも思っていませんでしたが、今回は2枚同封する ことにしました。 全部を封筒に入れて25グラム以下であることを確認し、10月8日に投函しました。

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そして、年の瀬もおしつまった、12月18日に見覚えのある封筒が帰ってきました。切手が沢山貼ってあります。 

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中にはお待ちかねのベリカードと思ったのですが、手紙が一通。 まあこれでも立派な受信確認書といえますが、 ちょっとがっかりです。

TO: Mr. xxxxx xxxxx
Subject: Reception Report
From: Primorskoe Radio (810kHz)
Dear Mr. xxxxx xxxx!
On behalf of our Company I am pleased to confirm that your report is correct.
Unfortunately, Ican not send you the Card of verification, because We have no any verification Card in our Company.
With best regards
FENは番組中で、停波のお知らせを繰り返していたのではないか、と思っています。 10年以上FENを聞き続けても、何も聞き取れていないことが明らかになった、とほほな事件でした。  (12/2002)
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